昨日はとても楽しみにしていた町内のイベントへお邪魔しました。
町有地の琴ヶ浜研修センターの管理運営が民間のアートクリエイション団体(一社)nor・株式会社enigmaに変わり、0次お披露目のような作品展示とトークイベントです。
私個人にとっては、
・町議会中継にて公募や運営の条件などが議題に上がっていて興味を持ったこと
・(私が)元々服飾系のクリエイターで、真鶴で世界レベルのデジタルアートが拝見できるなんて!絶対子どもに見せたい!と感じたこと
という2点で、連休中に必ず伺おうと決めていたイベントでした。
琴ヶ浜研修センターを '真鶴アートサイト(仮)' と名付けたnorのお2人は、現在開催中の大阪万博のパビリオンのディレクションをそれぞれに担当されていたり、主催の松山周平さんはForbes JAPAN特集「100通りの世界を救う希望『NEXT 100』」に1/100として選ばれていたりと、(とても簡単なご紹介になってしまい申し訳ありませんが、) 世界が認める新進気鋭のクリエイターさんです。
私は幼少期、長野県という田舎に住みながらも、感性を磨く事を大切にしてくれた両親(母と途中から義父)のおかげで、かなり多くの国内外のアート作品に触れさせてもらう事ができましたし、そんな両親の育て方に今もとても感謝しています。
我が子は一体何を感じるのだろう?と、トークイベントの前にまずは子どもと展示室へ向かいました。
(下は写真ですが、実際には粒子一つ一つが動き続けます。キレイ。。)
真鶴の石や岩をスキャンして製作された『枯山水』だということですが、4歳児に枯山水の概念を伝えるのはあまりにも難しく…
何の説明もなく、母に導かれるまま雅楽が流れる暗い空間の中で大きなモニターを覗き込む子ども。
そして一言、「吸い込まれそうー!!」
うん、そういうの。そういうのが、いいね!!
と、満足する私でした。笑
(本人の中に残るのは、屋外のキッチンカーで頼んだ美味しいポテトの記憶だけだとしても、この積み重ねが必ず何かの糧になると信じている母親です。)
しばらく琴ヶ浜で磯遊びをした後は、我が子はお迎えに来てくれた主人にお願いし、私はトークイベントへ。
トークイベント冒頭では、2017,2018年の真鶴町でのクリエイターズキャンプ/ハッカソンを通じて、町の魅力を感じて下さったこと、同町有地が公募に出ていることを知り手をあげてくださった事など、ここへ至る経緯をお話しくださり、今後の方向性と町との関わり方について非常に丁寧にお話ししてくださいました。
また、とても多彩な登壇者の方々の興味深いお話に、母の私も吸い込まれるような2時間でした。
どれほど価値のある事業がこの真鶴の地で産声を上げたのか、残念ながら町の方々にはあまり伝わっていなかったように思いましたので、僭越ではありますが、ご紹介を兼ねてブログにさせていただこうと思いました。
正直なところ、アートは、ともすれば音楽以上に「伝わらない」分野だと、感じています。
価値がどこにあるのか? 何故、何をしているのか?
それを言葉で説明しようとすると、本当に伝えたかった事がスルスルと水のように指の間からこぼれ落ちてしまう分野だなぁ、と。
例えば、こちらは真鶴町へ移住/出産後に、渋谷ヒカリエで開催した私の個展時の作品写真です。
(手前味噌で大変恐縮ですが、作家本人なので '何でも言いやすい作品例' として出させてください。苦笑)
一つずつ私が描いた紫陽花のイラストをベースに、特殊な和紙を使い成形しています。
タイトルは ’Japonism’(ジャポニスム)。
私は服飾作家ですので、これが耳についたり、髪についたりと服飾小物へ形を変える訳ですが…(写真下がイヤリング類です)
残念ながらコロナ禍と妊娠・出産が重なり、パリで開催されるジャパンエクスポへの出展は叶いませんでしたが、そちらにお声がけいただくきっかけとなった作品でもあります。
ここで、このブログを見てくださっている皆さんに質問させてください。
私のこの作品は「良い」ですか?「悪い」ですか?
「何かを感じる」「何も感じない」??
個展会期中のお客様の受け取り方も本当に人それぞれで、在廊している私(作家)の前を素通りする人が、それはそれは沢山いらっしゃいました。
その中に、信じられない程まとめてオーダーをされる方、次回の催事のお声がけをくださる方が一握り。
(どんな作品も実物と写真では感じ方が違うものですが、それでも)
これがアートやクリエイションの世界なのだと思います。
昨日、とても懐かしい感じがしたのは、クリエイターの方々の言葉選びでした。
あまりにも言葉にするのが難しいものを、何とか表出させようとすると 'ナラティブ' だとか 'コンテキスト' だとか 'フィロソフィー' だとか…
ある一時期、都内で製作活動をしていた私にとっては、どれも聞き馴染みがあり、大切にしていた言葉達とまた出会えたという感覚ではあるのですが、それは正直なところ、「真鶴町で当たり前に聞く言葉」ではありません。
真鶴では 'クラフトマンシップ' より '作り手の想い' が、'ユーティリティ' より '汎用性' や '実用性' が、言葉としてはより皆さんに伝わるはずです。
きっとあの場にいた大多数のアーティストさん達 (本当に沢山、町外からいらっしゃってました!) には非常にわかりやすく価値のあるイベントとなり、初アートイベント!のような方にとっては、「何が何やら…」ではなかったかなぁ。
そしてここからが大切なのですが、
それは ‘『美の基準』ととてもよく似ている!’ と感じました。
私は、'真鶴町にとっての当たり前' を、どうにか言葉にしたものが 『美の基準』ではないのかな?と思っています。
それは決して「景観条例」という言葉で括れるものではなく、町のなかでごくごく当たり前に紡がれてきた物語であり、営みそのもの。
拘束力も罰則も直接的な表現もない、だけど、町に長く暮らしてきたみなさんなら「あぁ、あのことね」と一瞬で感じられる '何か' のことです。
これはもはや町を挙げてのアートであり、きっとそれを '美' と呼んできた町なのですね。
そういう意味で、真鶴町とアートやクリエイションはとても親和性が高く、「感じること」が得意な町民の方々が暮らし、その '何か' を感じた私のような人間が、「町にどうしようもなく惹かれて住むようになる土地」なのではないかなぁ、と昨日再確認しました。
norの皆さんも、クリエイター仲間の皆様も、そんな真鶴町の言葉にならない '何か' を感度高く理解されていて、かつ大切にしていこうとされていて、町民として(私もまだまだ新参者ではありますが)とても嬉しくなりました。
長くなりましたが、norの皆様の活動拠点のお披露目としては、ここがスタート。
単発の催事ごとではなく、町に根付く新たな物語を創造しようとされています。
町に生きる皆様にも、ぜひ興味を持ってnorの皆さんのご活躍と町での展開を観て行っていただけたら嬉しいなぁ、と感じました。
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